「暁現象」などと呼ばれる、糖尿病患者や予備軍の方々によく見られる起床時の血糖値の上昇ですが、これは主に体内で行われている「糖新生」が原因とされることが多いです。
ググればあれこれ出てくるので糖新生については詳細省きますが、以前「糖新生をしているのは肝臓だけではない」でもご紹介した「腎臓の糖新生とその特異性」という記事(J-STAGE、科学技術情報発信・流通総合システム)では、肝臓と腎臓が糖新生を行っており、相補的な関係にある、という研究結果が記されていました。
この相補関係は、それぞれが日周リズムを持っていてそれが6時間ほどずれており、主に深夜帯は腎臓が主体として糖新生を行っているというものです。
インスリンは腎臓の糖新生には影響を与えない
この「腎臓の糖新生とその特異性」をまた読み直していたところ、こんな部分がありました。
肝臓の糖新生の調節には,インシュリンやグルカゴンなど糖代謝を調節するホルモ ンがその主役を演 じているが,腎臓ではやや趣きを異にし糖質コルチコイドや酸-塩基平衡が大きな影響を与えることが知られている。
腎臓の糖新生とその特異性より
インスリンは体細胞における血中グルコースの取り込み作用の増加とは別に、肝臓における糖新生も抑制している。
逆に、インスリンでは「腎臓の糖新生には影響を与えない」。
つまり、膵臓からのインスリン分泌が低下している、あるいは枯渇している糖尿病患者や予備軍の方々に置いては、深夜の腎臓における糖新生はそもそも制御が難しい、ということになります。
もちろん、インスリンがしっかり出ている、あるいは投与されていれば、少なくとも血中グルコースの取り込みは定常的に行われ続けるので、通常のホメオスタシスにおいて血糖値もバランスが保たれるわけですが、インスリンの分泌に異常があったり投与量が少ないと、血糖値が上昇することになります。
ましてや腎臓による糖新生が優位な深夜帯では(これについてはこちらの記事で)、インスリンでもその制御はできないので、インスリン分泌量とその感受性などいろいろな原因によってコントロールがし辛い時間帯であると言えるのではないかと思います。
アシドーシスが糖新生を促す
なお、腎臓の糖新生に影響を与えるものは、先にもありましたが、「糖質コルチコイドや酸-塩基平衡」が関与しているとのことです。
糖質コルチコイドは副腎皮質から分泌されるホルモンで、これが分泌されると腎臓の糖新生が亢進されます。
酸-塩基平衡は血中のpHを弱アルカリ性に保つための腎臓の機能で、血中のH+とNH3(アンモニア)をNH4+にして尿から排出するものです。
前者はわかりやすいですが、後者が何故糖新生に影響しているかというと、
血液のpHが低下して酸性側に傾くと腎臓でのアンモニア産生を増加させることによってこれを是正しようとする。
(中略)
アンモニアを排泄することを通じて酸-塩基平衝を維持するために,このα-ケトグルタール酸がすみやかに処理される必要がある。
そこで,α-ケトグルタール酸の処理機構としてPEPCK活性が増加すると考えられている。
腎臓の糖新生とその特異性より
抜粋だと大量になるのでサクッと書きますと、「PEPCK」とは「ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ」と言い、糖新生における必要酵素の1つで、解糖系の不可逆な部分を補うための酵素でもあります。
糖新生についてはこちらの図がわかりやすいかと思います。(図のピンクの矢印)
つまり、「PEPCKが活性化する=糖新生が行われている」と判断できるわけです。
ちなみに、α-ケトグルタル酸はTCA回路の中で出てくる代謝物で、この辺とかこの辺を見るとどういう経路で糖新生されているかがわかると思います。
で、何を言いたいかというと、「血液のpHが酸性に傾く(アシドーシス寄りになる)と、結果的に糖新生が更新する」ということであれば、逆に「血液のpHがアルカリ性に傾く(アルカドーシスアルカローシス寄りになる)と、糖新生は抑制される」のかな、と・・・
ま、人体の仕組みはそんなに単純ではないでしょうし、そもそも全てが可逆的でもないですから、単なる憶測ですが。(^_^;A
まあそれはさておき、じゃ、「血液のpHをアルカリ性に傾ける」にはどうすればいいかと・・・
ん〜〜
- アルカリ性食品を就寝前に摂る
- 呼吸数を増やす(あるいは深呼吸をする)
これくらいしか思い浮かばない・・・
そもそも就寝中に「呼吸数増やしたり深呼吸」なんか出来ないし。(笑)
「下手な考え休むに似たり」なんて言いますけど、まあそれでもあれこれ考えるのは楽しいものです。(^_^;A
コメント
大変有益な情報ありがとうございます。
肝臓の糖新生しか知りませんでした。私自身は就寝前に重曹服用していますが、糖尿病の夫にもトライさせたいと思います。
デラシネさん、こんにちは
コメントありがとうございます。
腎臓の糖新生に関する内容は事実ですが、重曹が良いか悪いかはあくまで素人の意見なので、その点ご了承ください。
もちろん、重曹自体が体に悪いものでもないと思いますので、適量であれば少なくとも悪影響はないかな、とも思います。