先日もちょっと果糖について書いたのですが、最近の学術研究のPDFを見てまたちょっと考えが変わりました。
Cell Metabolismという学術情報紙に掲載された研究結果に、以下のようなものがありました。
The Small Intestine Converts Dietary Fructose into Glucose and Organic Acids
「小腸は摂取した果糖をブドウ糖と有機酸に変換する」
リンク先には概要までしか書かれていませんが、あれこれググって全文のPDFを見つけたので、頑張ってGoogle先生と一緒に読んでみました。(^_^;A
ざっと目を通したところ、おおよそ以下のようなものでした。
- 経口摂取した果糖はこれまでは小腸で吸収され速やかに肝臓で処理されていた、とされていたが、実際には一定量までは小腸の上皮細胞でブドウ糖や有機酸に変換されている。
- 0.5g/kg(体重1kgあたり0.5g)まではほぼ小腸でブドウ糖や有機酸に変換されている。
- 一定量を超えると、果糖はそのまま門脈に流れ込み肝臓へ運ばれ、一部はそのまま大腸へ送られる、つまり、小腸は肝臓に果糖の処理をなるべくさせないような働きを持っていると考えられる(なぜなら、高容量果糖は肝臓に負担をかけ疾病の原因となる思われている、また、中性脂肪の生成も行われるため)
- 小腸で変換されたブドウ糖や有機酸(主にグリセラート=グリセリン酸)の大部分は全身に送られている(グリコーゲンなどにはほとんどならない=肝臓をほぼ素通り)
- 果糖を摂取して生成されるグリセリン酸の量は、ブドウ糖を摂取した場合に比べて11倍多く生成されている=結果的に多くの中性脂肪の生成につながる
果糖自体の毒性についても言及している部分がありましたが、それはさておいて、やはり一番目についたのはタイトルにもあるように、「一定量までの果糖は小腸でほぼ全てブドウ糖や有機酸に変換され、肝臓のみならず全身に送られている」という点です。
これは新しい事実の一つであり、なおかつこれまでの研究結果に対しても齟齬のないものだと思います。
もちろん、「肝臓で果糖は速やかに代謝される」点は変わりなくこれまで通りなのですが、こうした事実が積み上がってくると、これまで曖昧だった疾病に対する考え方や取り組み方もより現実的になってくると思います。
「果物は効率の良いエネルギー源」という見解の裏を返すと、「体内でなるべく早く処理したい性質のもの」という意味でもあり、それが肝臓のみならず小腸でも同様に処理されているとなると、前者よりも後者の意味するものの方が重要なのでは、と、より確信出来ると考えられます。
果糖に対する考え方は、自分の中でまた少し変わって来ました。
ところで、この研究結果にはもう1つ糖質セイゲニスト的に気になる一文がありました。
Intestine-specific knockout mice for glucose 6-phosphatase (G6pc) indicate that intestine contributes 25% of systemic gluconeogenesis both after prolonged fasting and in diabetes.
「小腸でのみ特異的にG6pcをノックアウトした絶食後や糖尿病のマウスにおいてからわかった事は、腸が全糖新生の25%を担っている」
これ、驚きました。
糖新生は肝臓と腎臓の一部でほとんど賄われていると聞いていたので、これも新しい事実でした。
やはり人の身体はまだまだ未知の世界ですね。
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